備忘録

※個人の感想です

しぬステ感想と、私の好きな舞台のはなし

俳優個人を推しているオタク個人の感想
だいたい己のツイートの焼き増し

 

舞台「吸血鬼すぐ死ぬ」全14公演お疲れ様でした。
公演期間中は頭がバカパワーに汚染されていて冷静に物事を考えられなかったけど、改めてしぬステが最高だったなと思ったので、珍しくちゃんとした感想を残そうと思います。わりと真面目な感想なので恥ずかしくなったら消します。

(しぬステの真面目な感想を書くなんて!なんてバカなやつなんだ!)

 

最初は推しがビッグタイトルの主演、ギャグ漫画、しかも吸血鬼役、一体どうなってしまうのかと思っていたのですが

面白くなりそうだとは思っていたけど、こんなに面白くなるとは思ってなかったよ!?
なんかよく分からないけどずっと面白い

全てがめちゃくちゃなのに全ての完成度が高くて、「何だこれは?!」という感情で2時間走り抜ける、味わったことのない経験をしました
何だったんだろう……具合の悪い時に見る夢ってよく表現されるけど、それに近かったのかもしれない

何にせよ最高の作品で、この作品に推しが主演として出ていることが心から嬉しいと思った。

  • しぬステ、大ヒット作品では?

少なくとも私の周りや目に見える範囲ではありますが、しぬステは舞台として大成功だったのではないだろうか。
原作、舞台役者、脚本家のファンで見に来た人。たまたま気になって劇場に来た人。ジョンのペンライトが欲しいから見に来た人。
どの人の感想を見ても大絶賛の嵐で、主演のファンとしてとても嬉しかった。
私は主演俳優のファンかつ原作ファンのハイブリッドとして見ていたけれど、どちらの視点から見ても贔屓目なしにめちゃくちゃ面白かったと思う。
昨今、ここまで大絶賛されている2.5作品(土壌ができているシリーズもの以外)も久しぶりではなかろうか。
吸死自体が名の知れたコンテンツで注目度が高かったという理由もあるし、私の観劇経験がだいぶ偏っているから、名作はもちろんたくさんあると思うけど。
推しの出ているものだと、モリミュの2019年初演を彷彿とさせる盛況っぷりだった。でもモリミュとしぬステを比べるのがちょっと悔しい

  • 何が良かったのか?
色んな作品を見て最近よく思うこと、しぬステでも思ったからせっかくだし文章として残しておこうと思う。
舞台に限らず、原作というものがある作品のメディアミックスというものは【理解・分解・再構築】が必ず行われるべきだと私は思っています。
(というかやらないと脚本が作れない……)

そして原作と別の土壌でその物語を再構築するにあたり、「原作と原作ファンを大事にする」ということが、大前提であって欲しい。
それは「原作の内容を舞台で再現すること」ではなくて、「原作ファンのことを考えて作る事」なんだな、と今回改めて、強く思いました。
原作ファンというのは読み手もそうですが、作り手や原作者様も含めてのことです。

原作のストーリーやセリフをそのまま再現することももちろん、作品を大事にしているからこそだとは思う。でもそのストーリーの運びは、セリフの言い回しは、原作(漫画、アニメ)の世界だからこそ面白い部分があると思う。
それを3次元に起こすことで、どうしても削ったほうが良い部分が出てくる。逆に増やした方がいいシーンやセリフもある。どのキャラを出してどのキャラを出さないかも同じく。
ただ、その改変が舞台にするための「ご都合」になりすぎてしまうのも違うと思うから、その塩梅が難しい……
そこをしぬステは上手いことやったからこその、原作ファン、舞台ファンどちらからも大盛況の理由だったのかなというところだ。
すごく当たり前のことを書いていて恥ずかしいけれど、これが上手く嵌るかどうか、なかなか難しいと思っている。原作が人気であればあるほど、期待されるものが多岐に渡るから。
舞台化するにあたり、吸死という作品自体、ストーリーが一本通っているわけではないというのも分かりやすさに繋がっていたのかもしれない。

そう、今作、とにかく面白いし分かりやすい。コメディ作品ににわかりやすいもクソもないけど。
分かんなくてもとにかく面白くて、面白いから、いっか!となる。

アルマジロとヌー語で会話できていることも、セロリを振り回している男がいることも、吸血鬼がみんなポンチな能力を持っていることも、原作を知らないと「何で?!」と思ってしまうかもしれない。
でもそれを勢いでゴリ押しして笑わせてくるから、「なんかよく分かんないけど面白かった!」に結果、なる。
この「なんかよく分かんないけど面白かった!」は吸死の原作も大体こんな感じだと思うから、そういう意味での再現度は凄まじいと思う。
とにかくでかい声でツッコミを入れれば面白い。下ネタを叫べば面白い。それで良いと思うし、私はそれが好きだと思った。
吸死という作品に求められているのはそういう面白さだと思った。

  • サイコーのエンタメ

見た人みんな言ってるけど、原作の面白さはもちろん、舞台として笑わせる手法をとにかく盛り込んでくれているところがやはり良い。
超アナログな舞台技法、OPはキャッチーなテーマソングとダンスで愉快に盛り上がり開幕、同じ流れでペンライトを振って客降りも交えて終幕。劇場出た人みーんな笑顔!
本当に驚くくらい、毎公演終わった後、すれ違う人たちみんな笑顔だった。その瞬間に劇場にいた人、原作ファンも俳優個人のファンも、関係者も、キャストやスタッフも全員が同じ気持ちになれているのではないかと思った。正直この舞台の内容は、外で大っぴらに言えるような内容ではない(バカすぎて)。だからこそ劇場という閉ざされた空間で目撃した私たちには、不思議な一体感が生まれていたと思う。
最近よくあるかっこいい映像演出とか凝った舞台装置とかエモい演出とか、そういうのを否定したいわけじゃないけど、吸死の舞台にはこのアナログ加減が合うのだと思う。
銀河劇場という場所も良かった。あの劇場の雰囲気が、劇場!という感じがして私はすごく好きだ。高貴な雰囲気がして、座席も見やすくて。舞台を見に行くオタクの好き劇場かなり上位にランクインすると思う。
そんな劇場で、こんなバカな内容の舞台をやってしまうところが良い。ステラボールでやっても何も面白くない。銀劇だから面白い。

オリジナル展開をラストに置いた全体の構成も良かった。最初と最後のシーンがリンクしていたり、ロナ戦のプロットとして見せるつくりも上手い。
初日が開ける前は、コメディ系の舞台(2.5に限らず)によくある、中盤〜ラストにかけてシリアスなシーンや考えさせられるような話を入れて、ちょっといい話的に余韻を残す脚本の構成になるかなと思っていた。

でもそんなことはなく、最後までずっと一貫してバカだった。少しでもいい雰囲気になったらすかさずY談波でぶち壊してきた。この舞台は泣くものじゃないんだなと思った。(それでも結構泣いた)
3時間以上じっくりとかけたシリアスなストーリーを見ることが最近は多かったけど、このくらいライトに楽しめるもので、余韻も何もなくて、それでも面白い作品は面白いのだと感動した。

  • キャスティング、役者の皆さんについて(私情)

正直キャストが出た時「このメンツで埋まるのだろうか」とまず考えた(すみません)

今人気と言われているような2.5作品に出ているような人は少なくて、というかキャストの人数自体が少ない。めちゃくちゃ人気のある人が出ているかと聞かれると正直そうでもない。私が見たことのある役者さんも3,4人くらいしかいなかった。これは推しとの共演作とかの問題もあるから置いておこう。
でもチケットは完売したし、立ち見や当日券もキャンセル待ちが出るほどの盛況っぷりだった。
正直事前に売れた分は、下にも書くけれど運営のやり方が巧かったのだと思う。けれど初日を終えてからの売れ行きは、作品の良さとキャストの熱量によるものだと思う。
全員が舞台の上で真面目に芝居をして、本気でふざけていた。コメディだからアドリブや日替わりで笑わせればいいや、みたいな空気が微塵もなかった。とにかく全部のシーンを全力で笑わせに来て、全力で芝居をしてきて、そのかっこよさに笑えた。
お芝居の感想を一つ一つ書くのは長くなりすぎるから割愛するけれど、全員のお芝居が余すところなく良かった。
特にロナルド役の鈴木裕樹さん、一見勢いと声量で押しているようにも見えるけど、どの公演も芝居がブレていなかった。初日からあのテンションなのに声を枯らすこともなく(すごい)、動きから疲れてるんだなと感じることもなかった。
真面目に芝居を作る人なんだなというのが伝わってきて、こんなバカな舞台に全力で取り組んでくれるなんて、素敵すぎるだろう、と思った。

私の推し、山本一慶さんは、舞台や作品を全体から俯瞰して見て、入り込みすぎずに作る人だ。(本人談、私もそう思う)
ラルクというキャラクター自体がそういう立ち位置にいて、ちょっと離れたところから冷静につっこんでいたり、1人で勝手に死んでいたり、そういう面白さがある。砂おじさんと一慶さんはとても似ていると思った。
何よりも細かい所作や吐息までドラルクそのもので驚いた。本物のドラルク(?)を生で見たことはないけれど、舞台上に居る彼を見て「ドラルクはそういう動きするよね〜」と謎に納得した。ダンスの指の反り方、手の角度、外野から見つめている視線まで。一慶さんの芝居にはこういう謎の説得力があって、見るたびに驚かされるなとしみじみ思った。
ロナルドは筋肉ゴリラというキャラの性質もあり、顔と声で客を沸かすことが多かった。一慶さんのラドラルクは、技巧を凝らして客を笑わせていた。この笑い、一慶さんの得意分野だなと皆思っていたと思う。

キャラクターと芝居がかっちりハマっていた。そして主演2人とも、バカみたいに真面目だと思った。

  • 運営もよかった

例えば公式Twitterのアカウント名がジョンオンステージだったり、顔合わせに「ジョン様」が参加していたり、アルマジロ型のペンライトが物販にあったり、砂が売ってたり、ランブロにジョンの個撮があったり、観劇の注意にキャラクターが使われていたり…(そういえばマナーくんとかはここでも使われていたから登場の匂わせはされていたのだな、と思った)
公式でこういうおふざけ要素を全面に押し出してくれてることが、とても信頼できる。
作品を愛してくれていると感じられる運営は素晴らしい。マーベラス様これからもよろしくお願いします。

余談ですがジョンのペンライト事前物販がすぐ枯れて問題になっていたけれど、作中で「みんなが必死になってゲットしたペンライト、こんなところで使ったごめんね〜!」と非常に風刺の効いたネタにするのも良かった。メタい。

続編?

終わってしまって寂しいし、こんなに楽しいコンテンツずっと続いていてほしいと思う反面、これで完全に終わりなのもそれはそれで良いな、と思っている自分もいる。
(具合の悪い時に見る)夢みたいな2時間を14公演駆け抜けて、千秋楽トリプルカーテンコールの後。最後の最後に深紅の緞帳が降りた。とても綺麗なフィナーレだった。この思い出を、ずっとこのまま仕舞っておきたいと思うくらい。
幕が降りて、私たちはシンヨコから天王洲銀河劇場へと帰されたのだと感じた。撤収作業があるからさっさと帰れと言われている気もした。
楽しかった期間はおわり、ポンチな吸血鬼と退治人たちに会うことは、もう無いのかもしれない。それでも確かに2023年の6月、私たちはシンヨコで、彼らを観ていた。